中国人民銀行の役割

中国人民銀行は、中華人民共和国の中央銀行に相当する組織で、北京市に存在します。1948年12月の設立です。

中国人民銀行は、日銀やFRBなど他国の中央銀行と同様、国の金融政策を担っています。即ち、政策金利の調整や、預金準備率の決定など、マネーサプライのコントロールによって景気の過熱や減速に対応します。


一方、他国の中央銀行と決定的に異なるのは、中国人民銀行は他国との貿易等で使われる人民元の流通も、完全にコントロールしていることです。人民元という通貨は、国債金融のトリレンマで言う所の「自由な資本移動」が禁じられた通貨です。人民元が国外へ流出することを止めなければ、人民元を米ドルと固定相場にすることは出来ません。
※正確には米ドルを含めた通貨バスケットとのペッグ

この「自由な資本移動」の禁止を行っているのが、中国人民銀行なのです。中国では、貿易での為替決済を、上海にある外貨取引センター1カ所に集中させており、人民元の売買を完全掌握し、そのうえで中国人民銀行が為替介入(元売りドル買い)しています。このような複雑な仕組みと為替介入を経て、現在の人民元の「不当なまでの」割安な為替レートを保っているのです。

この仕組みがあったからこそ、1994年1月の人民元の切り下げの時も、また2005年7月の切り上げの時も、自在に為替レートをコントロールできたのです。

ちなみに、この元売り介入によって積み上がった資産は「外貨準備」という形で、中国人民銀行の金庫に保管されています。この外貨準備の残高は、2012年末で3兆3千億米ドル(約330兆円)となっており、ダントツで世界最大の金額です。そして、中国人民銀行のバランスシートの中身を見ると、およそ84%が外貨となっており、米国債などの形で保有されています。

しかし、この外貨準備、実は減損を抱えており、発表されている金額ほど実際には存在しないという説もあります。中国政府高官などが、私的流用して海外へ持ち出しているという噂すらあります。

なお、香港ドルも米ドルとペッグしていますが、それは香港金融管理局がコントロールしており、中国人民銀行は直接関係していません。