中国が元安政策を続けられない理由その2~インフレと不動産バブル

中国が元安政策を続けられない理由として、一つは外圧への対応が挙げられます。そしてもう一つ、大きな理由としては、中国国内のバブルおよびインフレ問題が挙げられます。

ご存じの方も多いでしょうが、2013年現在の中国では、激しい不動産バブルが起きています。富裕層だけでなく、地方政府までもが、不動産投機にのめりこんでおり、不動産価格は毎年上がり続けています。


彼らが不動産投機に走る理由は、中国政府の人民元安政策が大きく関係しています。中国は自由な資本移動を制限することで、人民元を安く抑えているわけですが、そのために中国の富裕層や地方政府は、自由に海外へお金を投資することが出来ません。経済成長の恩恵でお金はハイペースで貯まるものの、海外へ投資できないため、国内の不動産市場へ投資資金が集まるのです。

また、後術する鉄鉱石や銅などの資源価格の高騰も、不動産バブルを助長しています。そのため、家を買うことは一般庶民にとっては「手の届かない願望」となりつつあります。

バブルというのは、膨らめば膨らむほど、弾けた時のダメージが大きくなります。中国政府は、90年代に不動産バブルの処理に失敗した日本経済を研究し、日本と同じ過ちを犯さないよう神経を尖らせています。不動産バブルを弾けさせず、ソフトランディングさせる事で、景気への悪影響を最小限に留めたい訳です。そのためには、

また、人民元安政策を続ければ、インフレが進行するという問題もあります。中国は、食料やエネルギー資源も保有していますが、何せ13億人の成長市場ですから、国内生産だけでは賄い切れてはいません。従って、海外から食料だけでなく、原油・鉄鉱石・銅などの資源を、大量に輸入している状況です。

よって、為替レートが元安ドル高になれば、これら資源の輸入価格が(元ベースで)値上がりすることになります。原油などのエネルギーが値上がりすれば、輸送や調理コストが上昇するので、食品価格が値上がりします。鉄鉱石や銅などは、住宅・ビルの建設には不可欠なので、不動産バブルが更に進行することになります。

中国のGDPは日本を抜いて世界第二位になりましたが、一人当たりGDPで見ると、まだ日本の10分の1程度の水準です。しかも貧富の差が激しく、庶民の生活は楽ではありません。そこへ更に物価が高騰していけば、庶民の不満は募るばかりです。独裁政権である中国共産党が最も恐れていることは、政権への不満が高まり、反政府デモが拡大することです。中国がインターネットの検閲を強めていることも、不満を持った国民を結集させない為です。

ゆえに中国政府は、インフレや不動産バブルで国民の不満を溜めさせることは、極力避けたい所なのです。ですから、インフレや不動産バブルを助長する人民元安政策も、そろそろ限界が来ているのです。