人民元と円の為替レート推移

人民元が今後、日本円に対して切り上がっていくのか?という点を考察する上で、まずは過去の為替レート推移を見ておきましょう。以下は、人民元と円の為替レートの推移チャートです。

人民元と円の為替レート推移チャート
1994年の人民元の切り下げから、2005年6月に切り上げが開始されるまでは、1ドル=約8.28元の固定相場制でした。しかし、元と米ドルとは固定されていましたが、日本円と米ドルの為替レートは当然ながら変動しています。よってこの期間は、人民元と日本円との為替レートは、ドル円の為替レートと、全く同じ変動をしています。2005年位までは、元=円(赤線)とドル=円(青線)が、全く同じ値動きをしていることが、見て取れます。

そして2005年7月21日以降、人民元は通貨バスケットへの連動相場制に変わりました。この通貨バスケットには、米ドル以外にもユーロ・円・英ポンドなどの主要通貨を中心に、韓国ウォンなど中国経済に関わりのある東南アジア諸国の通貨も含まれているとされています。

但しこの通貨バスケット、かなり謎に包まれた存在です。通貨バスケットの中身、具体的な各通貨の比率は明らかにされておらず、中国政府は「米ドルの比率は50%未満だ」と公表しています。ところが、様々なシンクタンクの調査を総合すると、相変わらず米ドルとの連動性が非常に高く、人民元=ドルのレートが切り上がっているだけに過ぎない確率が高そうです。例えば、三菱東京UFJ銀行の調査レポート(PDF)によると、人民元の通貨バスケットに占める米ドルの比率は90%を超えており、切り上げのペースが変わっているだけだと指摘しています。

米ドルは世界の基軸通貨であり、また中国にとって最も大きな貿易相手は言うまでもなくアメリカ合衆国です。一方で、ウォンやポンドなどのような、脆弱なローカル通貨と連動する必要性は特にありません。

従って今後も、人民元は事実上、米ドルとペッグ(固定レート)が取られていき、その比率がどれだけ切り上がっていくのかという事だけが、焦点だといえそうです。